ウォーキングの功罪(ナンバ歩き考)

ウォーキングは身体に良いか

 健康増進=ウォーキングという概念が現代人にはある。
 たしかに手足を大きく振り、大股で颯爽と歩くのはさわやかである。
 この大股、というのは曲者である。
 踵から着地すると、自分の身体が前へ進んでいるのを一瞬止める向きに力が掛かる。
 足の関節に過大な負荷が掛かるので、それを緩和するために底の厚い靴が必要になるのだ。
 また歩幅を大きくするために腰を廻して歩くことになり、腰椎の中にある神経を圧迫してしまうことになる。
 内臓にはじわじわとボディブローとなってダメージが蓄積するし、腰椎の軟骨は補充が利かないのだ。
 一生の中で背骨を捻ることの出来る回数は人によって決まっている。
 健康増進のために、わざわざその回数を消費するのはいかがなものか。

ナンバ歩きについての考察

 ナンバ歩きを説く本が何冊か出版されている。
 今、手元にあるのは「ナンバの効用 小森君美」である。

 まず、ナンバとはどうゆう歩き方なのかを整理したい。
 現代人が思っている身体の構造とは、背骨があって腰と肩が付いていると考えることが多い。
 実際、ゴルフ・野球などは腰を廻してやるものだと思われている。
 歩くにしても、腰を捻って肩を反対方向に捻って歩いている。

 一方、ナンバとは身体を背骨ではなく、胸と腰という二つのフレームで考えるやり方である。
 フレームは平行四辺形的に変形することが出来るが、ねじれることは出来ないと考える。
 ねじれないので、手と足が逆の動きをすることは不自然で、全体を協調して動かすとすれば、右足を出すときには右肩は上昇するのが当たり前。
 小森氏のナンバ論では更に、「足で地面を蹴らない」ことが言われている。
 これは、蹴って進もうとすると蹴っている足だけが身体を前進させる役割を担うことになり、足に負担がかかってしまうという考え方である。

ナンバではどうやって歩くか

 身体の重心を靴より前に持っていって、なおかつ倒れないように足を出すことで歩きます。
 前に進む動きを阻害しないようにするには、ウォーキングのように足を前方に出してはいけません。
 出来るだけ、身体の真下に着地させるようにします。
 足を前方に出してしまうと、着地の瞬間に身体を後ろに蹴ってしまうからです。
 靴底は水平に上げ、水平に着地させます。
 難しいのは、着地している足に体重を乗せないことです。

江戸時代の人は本当にこんなややこしい歩き方をしていたのか。

 歩くのに、文庫本一冊読破しないと歩けない、ナンバのようなややこしい歩き方を江戸時代の人は本当にやっていたのでしょうか。

 やっていたと思います。
 さっきのナンバ歩きを整理すると、
 1)足を大またに開かない。
 2)身体をねじらない。
 という動きです。
 これは着物を着て、草履を履いているときなら誰でもやる歩き方なのです。
 着物を着て、足をおおまたに開いて歩くとすぐに着崩れてしまいます。
 また、草履に足袋ではしっかりと地面を蹴ると、足袋が滑ってしまいます。


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