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脱力について
ピアノを弾く際には「脱力」ということが言われますが、バイエル・チェルニー・ハノンなどの基本的な教則本で言及されていない事柄であるために、どこまで進んだら脱力を覚えるとか、どうやればよいかなどは明確な方法が示されることは少ないようです。
さらに「脱力」イコール「重力奏法」と理解されることもあり、ピアノを学習する子供が脱力について学習する機会は皆無だと言えましょう。
脱力の必要性
ピアノの弦が3本になって、ハンマーが大型化し、鋳鉄フレームの高張力弦になったときから、あの重たい鍵盤をどうやって少ない力で長時間弾き続けるかということが課題となってきました。
幅の狭いストロークの短い軽い鍵盤のモーツァルトの頃のフォルテピアノとは違う弾き方が現代のピアノでは必要なのです。
どの部分の力で鍵盤を押さえるかを考えると言うことです。
脱力部位の差による脱力の種類
一口に「脱力」と言っても、色々な解釈があります。
上の図は手の模式図です。
肩から指まで関節がつながっています。
【第一の方法】
脱力の形態の一つ目は、指の関節の力を抜いて後の部分は緊張したままにしておくやり方です。
指が手首を支えませんので、肘・肩・手首で手のひらを支える必要があります。
鍵盤を押すのは、主に指の力になります。
利点:ボトミング寸前で鍵盤を押すのをやめることが出来る。
欠点:腱鞘炎になりやすい。
【第二の方法】
脱力の形態の二つ目は、指の関節以外の関節の力を抜く方法です。
俗に言う重力奏法という形です。
鍵盤は指の筋力で押すのではなく、腕全体の重さで押さえることになります。
勿論、ピアニッシモなどは手首を腕の力で浮かせて弾きます。
利点:弾いていても疲れない。
欠点:鍵盤を必ずボトミングまで押してしまう。
習得するのにある程度の肉体が必要。
と、このように二通りの脱力方法があり、それぞれに長所短所があります。
全部の関節を脱力してしまえば、腕は鍵盤まで上がってきませんので、どこかの関節は緊張させておく必要があります。(当たり前か…)
時間軸による脱力
前項では部位による脱力を見てきましたが、ここでは観点を変えます。
重力奏法でも、完全に腕の力を抜けるのは100%のフォルテの時だけです。
それ以外の音量では、手首を腕の力で浮かせて重さが鍵盤に全部かからないようにしなくてはなりません。
クラビコードやチェンバロではなく、ピアノに限定して考えるならば、打鍵に関係するのは鍵盤を押し下げる速さであって一旦鍵盤を押さえてしまえばあとはもうダンパーが戻らない程度に抑えておけばよいのです。
どうやって鍵盤を押さえるかよりも、どうやって力を抜いて音を延ばすかに重点をおいたほうが奏法改善になると考えます。
これは弦楽器を弾くときのコツに共通するものです。
ギターを弾くときも、ピックが弦にあたる瞬間以外はピックは落ちない程度にゆるく握っています。
ウッドベースの場合にも、弦をはじく以外のときは手にも指にも力は入っていません。
ピアノの場合には、打鍵後には鍵盤を押さえつけて響きを妨害するよりも鍵盤を少し浮かせてピアノのボディを響かせるようにしたほうが良さそうです。
重力奏法では、打鍵したあとの鍵盤で手首を脱力して休憩させるようにします。
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