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門外漢がピアノ教育を理解するための序章

 子供がピアノを習うことになったとして、全部ピアノ教師に任せてしまっていいのでしょうか。
 日本のピアノ教育は変遷期にあります。
 ピアノが弾ける人に任せていると知らないうちに古い奏法を教えられて、恐い「ハイフィンガー」にされてしまうかもしれません。

 ピアノが弾けないからこそ可能な、親としての役割があります。
 今、ピアノが弾ける人は幼少期からピアノ教師について習ってきた人たちです。
 ということは古い概念でピアノを学んでいる可能性が高いのです。
 ピアノ奏法は日々進歩しており、最先端のプロ演奏家はそれに追従していますが、一介のピアノ教師のレベルでは古いテクニックのまま教えています。
 もっとも顕著なのが、古典だろうがバロックだろうがかまわずに"指を立てろ”と指導するやり方です。
 普通のピアノ教師は子供の指を立てようとしますので、その陰で寝かせた指も指導していかないとショパンより先に進めなくなります。

日本のピアノ教育の現状

 18世紀になってヨーロッパで始まったピアノ文化は、19世紀になってピアノが大型化するまでチェンバロ文化のにおいを濃厚に残していました。
 20世紀初頭に「重量奏法」が提唱されるまでそれは続き、明治の文明開化を迎えていた日本はその改革寸前の古いピアノ文化を輸入してしまうことになります。

 軽いけれど途中に弦の抵抗がある鍵盤を上から叩くのに適した「ハイフィンガー奏法」を習い覚えた初期の日本人ピアニストは東京音楽大学の教授となりその後の日本のピアノ教育の方針を決定付けました。

 国内における東京音楽大学(のちの東京芸術大学)の影響は大きく、門下生は全国に分布して「ハイフィンガー」を広めていきました。  一方、欧州では「ハイフィンガー」はすっかり駆逐され「重量奏法」を元にした奏法が主流となっていました。
 日本国内のコンクールで優秀な成績を得た日本人が欧州に留学に出てみると、ハイフィンガーは通用せず、初歩からやり直しをさせられる始末。

 ハイフィンガーの張本人である井口基成は春秋社から白い楽譜を出版し、東京芸大を目指すものはそれを使わざるを得ない状況となっていました。
 ハイフィンガーでは駄目だと気付くのは、留学経験を持つ一部のピアニストに限られたため、音大からピアノ教師へと進んだ一般のピアニストが重量奏法に目覚めることはまれです。
 悲しいことにこれで現在にいたります。

ハイフィンガーが蔓延したもう一つの理由

 日本人は勤勉です。
 野球なら、ビデオを見て自分のフォームを観察する人よりも、その時間に素振りをする人のほうが尊敬されます。
 ハイフィンガーは、理論が簡単で、ただ肉体的な修練のみが要求される奏法であるので、日本人の心情にあった奏法だったのでしょう。
 ピアノ教師は模範演奏をする必要も無く、ただ「指を立てろ」と怒鳴っていればいいので普及には拍車がかかりました。

 更には日本人のコンクール好きが上げられます。 幼児からピアノをはじめて、小学生になる頃にはもうコンクールがあります。
 ここで入賞しようとすれば、ハイフィンガーで弾かないと会場の審査員まで届く音が出ないのです。
 重力奏法は小学校高学年くらいでないと肉体的にも無理ですから、それまでは読譜力と理論を中心にレッスンすべきなのです。

もっと歴史を勉強しよう

 日本では欧米の19世紀末のピアノ文化を切り取って輸入したので、そこに至るピアノ奏法の進歩や楽器の進歩が無視されています。
 当然、それ以後のピアノ文化とも切り離されているのです。
 特に小さいうちに弾かされる古典派の曲は古典の楽器でちょうど良いように作ってあるので、ヤマハやスタインウェイのグランドで弾くには不似合いです。
 親が解釈の手助けをしてやらないといけないのです。

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