ソフトボールのキャッチボールについて
キャッチボールのやり方はあまりにも基本なので、どこにも掘り下げて書いてあるところがありませんよね。
野球とソフトボールの違いとか、昔の野球少年と今の子供のおかれている環境の違いとか考えるべきところは色々あります。
伝統的なキャッチボール指導
普通は、「両手で捕れ」「左足をあげてから投げろ」と教えます。
これをそのまま、現代の初心者小学生に教えるのは問題があります。
直径の小さい野球や軟式のボールはぺたんこに使い込んだグローブでも捕球出来ますから、ボールが確実に捕球できることを前提に指導をしても良いのです。
両手で捕る理由は、捕球後に投球動作へ移行しやすいこと、手より先に足を動かして体の中心をボールに持っていくことを教えるためです。
さて、ソフトボールを始める現代の小学生にはそれよりも先に教えることがあります。
始めたばかりの子供に対して
グローブを買ってもらったばかりの子に真っ先に教えるべきなのはグローブの型付けです。
軟式ボールでキャッチボール経験がある子供も同じです。
ペタンコになった軟式用グローブに型を付け直すか、新しいソフトボール2号用グローブを買うかどちらかになるからです。
型が付いていないグローブでソフトボールを捕球しようとすると、右手で蓋をするか、捕球したあとグローブをぐるんと半回転させて胸に抱こうとするしかありません。
グローブだけでボールを確保していられない状態なわけで、捕球後にボールを落とす確率がとても高くなります。
そんな子には真っ先にボールをこぼさないグローブを作らせることが必要です。
両手で捕っていてはその感覚は得られません。
片手で捕って、捕った後グローブを動かさないことを指導します。
片手で捕れるようになった子には
そんな子には両手捕球を教えても良いです。
両手で捕球すると身体はボールの軌道に対して正対します。
そのままで送球させないように。
捕球後送球するときに身体を半回転させて半身になることを教えるのが条件です。
また、ゴロ捕球のときにグローブに右手を添えたまま走るようならちゃんと注意してください。
両手捕球を身体に染み込ませるとこの弊害があります。 右手がグローブの裏から離れなくなってしまうのです。
僕の場合には、これが恐いので両手捕球はなるべく教えません。
逆にボールを恐がる子には両手捕球を教えるほうがよかろうと思いますけどね。
足が付いてくるようになった子には
ボールがそれたときにちゃんと足が先に動くようになった子には、もう片手捕球を教えます。
捕球できる範囲を広げるためです。
右側と左側のグローブの出し方をちゃんと教えてください。
総合すると
両手捕球に関して小学生ソフトボールに限って言えば、小3まで片手、4年5年を両手、6年を片手ということになります。
途中で言うことを変えなくてはならないので、僕はずっと片手捕球を指導します。
どうせ、「手よりも足を先に動かせ!」というのはずっと怒鳴っている必要がありますからね。
半身で捕って、半身で投げるほうが自然だと思いますから。
やっと投球だ
さて、投球動作です。
送球動作で一番目立つのは、ショートゴロ→一塁へ矢のような送球という場面とか、レフトへ抜けた打球をレーザービームでバックホームなどですよね。
そのせいか、コーチ陣の指導も遠投重視になりがちです。
遠投しかさせていない子がよくやるミスは、ショートから一塁への送球が高めに浮くことです。
捕手が振り逃げの打者走者に対してライトオーバーの送球をしてしまうのも良く在ります。
これは短距離キャッチボールをさせていないコーチの責任です。
内野のキャッチボール
イチローがレーザービームを投げるときは右腕が伸びたまま遠心力を最大限に生かした投げ方をしますけど、内野はこの投げ方をしてはいけません。
加減しないと一塁の頭上を越す投げ方は本番で失敗します。
回転動作ではなく、直線動作で投げるようにします。
肘を曲げたまま、後ろ足の蹴りと腰の回転で手首を押し出します。
この投げ方だと、強すぎてもボールの軌道が変わりません。
もっと近距離キャッチボール
ショート→セカンドとかセカンド→ファーストというのは遠投キャッチボールばかりさせられてきた子にとってはなじみの無い距離です。
超近距離キャッチボールもしっかり練習する必要があります。
そこで練習方法の提案です。
1)3人キャッチボール
二人対一人のキャッチボールです。
二人組みのほうが捕球したあと隣の子に投げます。
受けた子が一人の方に投げます。
受けたグローブの中から予備動作無しで隣にトスする練習です。
トスしろというといちいちバックスイングしてから投げる子がいるので、要注意です。
これをやっておかないとゲッツーやセカンドゴロのアウトが取れません。
2)キャッチボール終了時の練習
「キャッチボール終了! 集合!」の声で監督のところに只走っていくのではなく、パートナーとキャッチボールをしながら徐々に距離を詰めていき10cm距離までトスできるようにがんばります。
3)キャッチボールの相手のやりかた
ボールを手にして相手が決まったら、上手投げで投げながら段々離れていきます。
対角の塁間まで離れましょう。
届かなくなったり、暴投するようになったらそれ以上離れるのはやめて近づいていきます。
近づいていくときに送球の強さが弱くなるようなら、普段のキャッチボール距離が遠すぎるのです。
山なりのボールの強さを加減して近距離を投げている証拠です。
そうゆう子はあわてて送球すると相手の頭上になげてしまいます。
ライナーで近距離の送球捕球ができるようになったら、また段々離れていきます。
ライナーで届かなくなったらそれ以上離れてはいけません。
遠距離の限界が見えたら、また近づいていきます。
50cmまで近づいてください。
どこからをトスに切り替えるのか良く考えさせてください。
また距離を離していきます。
どこまでトスで届くのか良く考えさせてください。
遠投はしなくていいのか
なぜキャッチボールで遠投の練習をするかと言うと、送球出来る距離を伸ばすためです。
そのためには、山なりボールではなくライナーでの送球で練習しなければなりません。
問題は届かない場合のこと。
子供だから当然、最初は届かないわけで、届かないキャッチボールペアの距離を無理矢理離すとどうなるか。
山なりボールでなんとか届かせようとするのが普通で、キャッチボールとは山なりボールでやるものと刷り込まれてしまう恐れがあります。
そーなるまえに、ライナーでキャッチボールが出来る距離まで近づけてライナーのキャッチボールを子供の意識に刷り込んでしまうのが重要です。
それでも、三塁手とか遊撃手の子には遠投してもらわないと一塁まで届きません。
そんな遠投の練習は、ライナーで投げられるコーチが相手になってがんがんに強いボールを投げて見せて、子供が強いボールを投げられるように促します。
内野守備とキャッチボールの関係
キャッチボールで相手の送球を捕球するときに、身体をどこに向けるかという問題です。
キャッチボールで教えるべきことは、捕球から送球を一連の動作で行うことです。
捕ってから送球の姿勢に移るのではなく、送球姿勢の一貫で捕球するということです。
それには、捕球してからどこに送球するのかで捕球姿勢が違うと言うことを認識させなくてはなりません。
キャッチボールは、ボールが飛んできた方向に投げるので、相手に対して横を向いた投球姿勢のまま捕球します。
これに対して、セカンドやショートなどでは打球の方向と送球の方向が違うので当然捕球の時の体の向きも違います。
特にショートでは、6年生になったころにはノーステップ送球を覚えて欲しいので、ゴロ捕球のときに、ファーストへの送球動作ができるような足の位置で捕球することを教えなくてはいけません。
そこでもう一度両手捕球と片手捕球
両手捕球の意味は、送球する手が捕球するグローブの近傍にあるというのが利点です。
送球する手でグローブの中のボールを掴んだとして、そこから送球動作のバックスイングは絶対に必要なわけで、その考え方では両手捕球と片手捕球との差は、ボールを持ってバックスイングするのか、送球する手までグローブごとボールを持っていくのかの差でしかありません。
本当に投球までの時間短縮を目指すなら、バックスイング完了した手にボールが渡るように体の中心ではなく、利き手側に偏芯した位置で捕球しなくてはなりません。
いくら投球までの時間を短くするといっても、ショートが併殺を狙う場合と、レフトがタッチアップで本塁阻止という場面では緊急度が違いますので、外野手は体の中心で捕球が基本でしょう。
さらに両手捕球と片手捕球
理想とするグローブの形には、全く違う二通りの形があります。
一つは両手捕球派の理想とする形で、それはポケットなど不要、ウェブ(網の部分ね)も不要、捕ってすぐ送球するのでポケットになぞボールがはまり込んでは、投げるのに手間がかかるではないかという考えのグローブで、それは限りなく素手に近づいていきます。
もう一つは、片手捕球派の理想とする形で、ちゃんとボールをグローブに収めましょう、それにはきちんとボールがはまり込むポケットが必要ですという考え方。
グローブは、関節があって可動はしますが、親指や小指部分は骨が入っていて硬いのが理想です。
大事なのは、このどちらで指導するかで、それを混同しては子供のためになりません。
僕は片手捕球派ですので、グローブの指は硬いままで、手の平と指の間の関節をつけてあります。
どーやら、この両手捕球派の捕球理論は戦前戦後の手作りグローブでどうやって野球をやるかというメソッドらしいのです。
野球博物館にあるような、まともなウェブもポケットもないグローブでは、捕球後ボールを落とす前に右手でボールを握る必要があるので、両手捕球にならざるを得ないのです。
この理論を根性で叩き込まれて、後進の指導に当たるときも何も考えずに両手捕球を教えるというのがその歴史ではないかと想像します。
なんだか、ピアノのハイフィンガー批判をしているような気分になってきました。
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